03. あえない(大雪)
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なんかさ、漫画とかでよくあるじゃない、「最後のお別れ」ってやつ。
主人公とかの大事な人が死んじゃうんだ突然。それでさ、信じられなかったり、悲しかったりで、ぼーっとしてたらさ。死んだはずの人がぱっと現れるんだ。生きてる時と同じように、まるで死んでなんかいないみたいな顔して。それで、笑顔でお別れとかお礼とか言うの。涙のエンディングって感じ。
ね、笑っちゃうよね。
僕もね、感動物とかそういうの全然興味ないし、元々淡白なやつって言われる方だし。
どっちかっていうと、鼻で哂って見るタイプだった、そういうの。
でもさぁ、今、馬鹿みたいに切実に、そんなことがホントにあればいいのにって、思ってるんだよ。
「白雪、お前顔見ねーのか?」
「…見ないよそんなの」
白いお棺からふい・と顔を背けて、歩き出す。前へ前へ。どこへ行こうとかそんなの考えてない。
子供かばって轢死だって。馬鹿じゃないの、そんなの今どきの漫画じゃやらないよベタすぎて。何、子供ってこの頃連れて来るようになったあの三人組?なんか最近はずっと一緒にいるみたいだったもんね、変に懐かれちゃってさ、自分でも嬉しそうな顔して面倒見てさ、結局そいつらのせいで死んじゃったってわけ、お前?
馬鹿じゃないの。馬鹿みたい。
そういえばさっき子供の泣き声も聴こえたような気がするかな、よく覚えてない。同情なんかしない。どんな事情があってもたかが子供でも、大神がそいつらのせいで死んだってことは変わんないだろ?そうだろ?憎むなって言う方が無理じゃない、二年も我慢してこれからって時に相棒を。相方を。
殺されたんだよ?
葬式からまっすぐ家に帰った。それまでの道のりなんてもちろん覚えてますとも、そう簡単に頭の中真っ白になってたまりますか。大神の二の舞にだってなりかねないし。
夕飯は要らない、と断ってから部屋にこもった。僕は大神と違って普段宿題をためる癖なんて無かったから一日分ぐらいサボったところでどうということはない。何もしないで、何も考えないで、ベッドに手足投げ出してただ寝転んでた。電気は消してない。
そうして考える。
馬鹿じゃないの馬鹿じゃないの馬鹿だろお前、大神。
エンドレスで考えながら虚空を睨む。
電気は、消してない。そう、冷めた(だけど少し狂った)思考を繰り返して、その裏で本当は僕はずっと願ってたんだ。
夢でもいい。
馬鹿みたいな、古臭い漫画みたいな展開でもなんでもいい。
…来てくれたらいいのに、大神が。
足が無かろうが透けていようが血みどろだろうが、あいつが、白黒の写真なんかじゃなくて動いたり喋ったりするあいつが、ここに来てくれたら。
「――…ばか」
呟いて目を閉じた。現実的に有り得ない妄想、そんなの僕が一番分かってるんだ。僕はリアリスト。ただ機械ってわけじゃないから、さすがにちょっと混乱してるだけ。
もういい、もう寝てしまおう、そしたらこんな妄想からは開放されるんだから。少なくとも今は。そう思って、神経を鎮めようとしたけれど。その時。
かたり
微かな、微かな物音だった。けれど僕は飛び起きて、
「大神!?」
叫んでた。目を丸くして。
もちろんそこにはなんにも無い、なんにも居ない。
「――…。」
固まった。勢い良く立ち上がろうとして浮かせかけた腰をのろのろとベッドに下ろし、今更呆然としてがらんとした部屋の隅を見つめてた。
きゅ・と、シーツを握った。
馬鹿は僕だ。馬鹿みたい。馬鹿じゃないの。馬鹿だよ。
あるわけない、分かってた、どんなに望んでも願っても祈っても、そんな夢みたいなことは。
そうだよ、有り得ない、でも願わずにはいられないんだ。だって一つだけだもの。僕が叶えて欲しい願いは、欲しいものは、たった一つだけ。
たった一つなのに、こんなに願ってるのに、どうして駄目なんだよ。無理なんだよ。
畜生。
再びベッドに倒れこむ。今度は仰向け。ぼふっ・と音がして、それからは静寂だった。かすかに、家族の立てる物音が階下から聴こえるだけ。
両手で目を塞ぐ。涙なんて出ない、はずだよ、僕はただ。
「…大神……」
僕はただ、お前の居ない世界がお前を殺したこの世界がどうしようもなく厭で厭で。
「………会いたいんだけど」
少し拗ねたように言えばいつも慌てて何か言ってきたお前のことだから、こうすれば何か返ってくるんじゃないかな。なんて、思ってる自分も厭で、厭で。
目を閉じて、塞いで、全部拒絶したいだけなんだから。
拒絶、したい。だって。君はもう。
「―――会えないよね」
馬鹿みたい、当たり前の現実なのに。
(あえない)
なのに、こんなに噛み締めてる自分が、いる。
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初の大神+白雪さんです。うわー白雪さん書きやすい…!(汗)
誰かが死ぬということはとても重いけど現実で、そして魂とか幽霊とかそういうものは死の現実の重さに比べるとあまりに根拠に欠けて軽すぎる。多分白雪さんぐらいリアリスト(っぽい)なら信じない、信じられない。だからこそつらそうだなあ。
少なくとも学生時は犬芭辰のこと許してなかったと思います。長い長い年月かけて、今の接し方の雪さんがいる気がする。。