01. あいたい(猿凪)
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なるべく音を立てないよう、ゆっくりと花瓶の中身を空ける。少し青臭くなった水が流れ出て、植物の欠片と共に病室の小さな洗面台を濡らした。空いた花瓶に新しい花を入れ、もう一度ベッド脇に置くために両手で持つ。目線を上げると、薄暗い部屋、目覚めない人。かすれたため息が漏れた。
ことり。花瓶を置いて、横の椅子に座る。じっと見つめてみたが、青白い顔はただ息をしているだけだった。
「…お兄ちゃん」
呼んでも、何も無い。声も笑顔も。
両親は今日は(今日も?)忙しくて、来れない。
静まり返った白い部屋の中で、目覚めてももう一番の夢は潰えてしまっている人を見つめ続ける。慣れてしまったけれど、やっぱり少し泣きそうになって。でも涙はとっくに涸れていて。
唇を噛んで俯くと、少し懐かしい声が耳に響いた気がした。
“凪さん”
はっとして顔を上げる。夏だというのにどこかしんと冷たい空気の病室は相変わらず自分と兄以外人気が無くて、頭に描いた人の笑顔も勿論どこにも無かった。
「……さ…るの、さん」
呟いた言葉は薄闇に消える。
すがるのは横たわる人の腕、白い布団越しに。
でも今泣きそうなのはすがっているその人のためだから、そんなことではいっそう苦しいだけで。
涙はやっぱり出ないけれど。
「――…あいたい…。」
切に、切に。手を組み祈りながら白球の行方を目で追っていた時のように、それ以上に、願っていた。
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二つ目に手を付けた01番、猿凪です。07番ぼーっと、他のお題誰にしようかなーって思いながら眺めてたらぱっと浮かんだので書き上げました。ちょい雰囲気アンダーになっちゃいましたが猿凪はほのぼの可愛いのが大好きです(笑) でも剣菱さん絡む猿凪も好きなんだよなぁ…そして剣菱さん出すとどうしても病気に触れずにいられないという;(ばかだ…)